生活習慣病について
30年ほど前まで生活習慣病は成人病と呼ばれており、加齢に関係するものと思われていました。しかし研究が進み、生活習慣の改善により予防が可能であること、成人でなくても発症する可能性があることから、1996年に当時の厚生省の提唱で「生活習慣病」と呼ばれるようになりました。
19世紀ごろまでは衛生上の問題からペストや結核、天然痘といった感染症で命を落とす人が多かったのですが、その課題が解決した現代では生活習慣が原因となる疾患で亡くなる人がかなりの割合を占めるようになりました。日本人の死亡原因の7割近くは、もとを辿れば生活習慣病に起因するものと言われています。
生活習慣病の種類
ここではよく知られた疾患について簡単にご説明します。
高血圧症
高血圧症とは血圧の高い状態が継続することにより、血管の内壁に過度の負担が生じる病気です。健康な人の血圧は、最大血圧が140㎜Hg未満、最小血圧が90㎜Hg未満とされ、このいずれかが高くなった状態が高血圧です。
初期の段階では特に自覚症状が出現しません。しかし、その間にも血管の内側は傷ついていきます。傷によって血管内が固くなって柔軟性を失った状態となり、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞、脳出血に罹患しやすくなります。
糖尿病
血液の中に含まれているブドウ糖は、膵臓から分泌されるインスリンによって細胞に取り込まれ、エネルギー源になったり、脂肪やグリコーゲンに変化して肝臓や筋肉に蓄えられたりします。しかし、何らかの要因によって血液中のブドウ糖が上手く細胞に取り込めなくなり、血液中にブドウ糖が過剰になってしまった状態、これが糖尿病です。
長期にわたって血液中の糖が多すぎる状態が続くと、動脈硬化など様々な問題が起こり、様々な合併症を招きやすくなります。心筋梗塞や脳梗塞、人工透析、失明などの深刻な事態に陥る場合もあり、注意が必要です。
脂質異常症
脂質異常症は血液中に含まれる脂肪分の濃度が異常値を示す病気です。健康な人の場合、LDLコレステロール値(悪玉コレステロール)が140㎎/dl未満、HDLコレステロール値(善玉コレステロール)が40㎎/dl以上、空腹時中性脂肪が150㎎/dl未満が基準値です。この値のいずれかが逸脱している方は脂質異常症と考えられます。また、2022年のガイドライン改訂により非空腹時の中性脂肪が175mg/dl未満という新基準も追加されました。
高尿酸血症(痛風)
血液中に含まれる尿酸の濃度を数値化したものを尿酸値(血清尿酸値)と言い、この数値が7.0mg/dl以上と判定されると高尿酸血症と診断されます。尿酸は水に溶けにくい性質で、高尿酸血症の状態になると結晶化するようになります。尿酸の結晶は長い針のような形状をしており、足の親指の付け根などにたまると炎症が生じ、激しい痛みや赤く腫れるといった症状が現れます。これを一般的に「痛風」と呼びます。
生活習慣病の予防と治療
すでに疾患がある程度進行してしまっている場合は薬物療法が必要ですが、初期や予防の段階では問題となる生活習慣の改善が非常に重要です。
例えば下記のような内容に改善する必要があります。
- 食事
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- 塩分や油分を控えめにする
- 肉よりも魚を積極的に摂取する
- 野菜の摂取量を増やす
- 嗜好品
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- 飲酒はほどほどの量と頻度にする
- 禁煙する
- その他
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- 適度な運動をできるだけ毎日継続する
- 規則正しく睡眠をとる
- 自分に合った方法でストレスを解消する
もちろん、これら全てを今すぐ実行しなければならない訳ではありません。患者さんによって疾患の度合いだけでなく、ライフスタイルや経済状況など全く異なってきます。「これだけはどうしてもやめられない」というものがある方もいるでしょう。治療を進めるにあたっては、他の方ではささいと思われるようなことでも出来るだけ考慮に入れたいと思っています。ご希望や不安など、何でも話していただいて構いません。画一的な治療ではなく、一人ひとりにあった治療を一緒に考えていきましょう。